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キャンプ場の事2026.02.02

「鹿嶺高原は大丈夫?」公的データで見るクマ情報と備え

昨年の過熱したクマ報道を受け、不安を感じているキャンパーも多いのではないでしょうか。しかし、公的データを紐解くと「報道による印象」と「鹿嶺高原の実態」には差があることが見えてきます。

本記事では、長野県・上伊那地域の現状を整理し、当施設のリスクが比較的低い理由を解説。そのうえで、安全をより確実なものにするために知っておきたい「キャンプのルール」を紹介します。

 

クマ報道に惑わされないために

出典:photoAC

 

昨年、マスコミでクマに関するニュースが日常的に報じられるなか、キャンプユーザーの間でもキャンプの利用を控える動きが広がりました。令和7年に日本オートキャンプ協会が実施した調査においても、回答した122施設のうち45.1%で予約キャンセル・売上減少が発生し、休業に追い込まれた施設があることも記されています。

 

鹿嶺高原キャンプ場においても、クマ報道が過熱した2025年9月以降で利用者の減少が見られ、「クマは出るのか?」「大丈夫か?」といった問い合わせも多くあり、クマに対する不安が多くの方に広がっていることを肌で感じています。

 

ただ、ここで大切なのは、報道で煽られる危機感と、鹿嶺高原周辺の実態は必ずしも同じではないという点です。出没の増え方には地域差があり、報道の印象だけで判断すると、必要以上の不安につながることもあります。

 

そこで本コラムでは、長野県と環境省が公開するデータをもとに、クマの出没状況について整理します。そのうえで、鹿嶺高原で安心して過ごしていただくためのルールについてもあわせて紹介します。

 

全国一律ではない出没増。東北の「突出」がつくる印象

全国的なクマ出没数
出典:環境省 クマ類の出没情報について [速報値]
※画像クリックで元データのリンクに飛べます

 

まずは全国のクマ出没数から整理してみましょう。環境省が公表している「出没情報(速報値)」によると、R07(※各件数は令和7年11月までの情報)における増加は全国一律というより、東北地方での突出が全体の印象を強く形づくっていることが読み取れます。

 

R03(2021年)R04(2022年)R05(2023年)R06(2024年)R07(2025年)
青森4382931,1467252,841
岩手2,6022,1795,8772,8839,270
宮城6805491,3578003,056
秋田8647303,7231,34013,172
山形2843777723572,711
福島3033857096181,895
「環境省 クマ類の出没情報について」から一部内容を抜粋

 

表内の東北地域に目を向けると、秋田県がR06の1,340件→R07の13,172件(約9.8倍)と桁違いに増え、岩手県も2,883件→9,270件(約3.2倍)と大きく跳ね上がっています。さらに宮城(800→3,056)、青森(725→2,841)、山形(357→2,711)と、周辺県でも急増が連鎖していることがわかります。この数値だけを見ると、確かに「異常事態」と受け止められるのも無理もないでしょう。

 

続いて、西日本に焦点を当ててみます。

 

R03(2021年)R04(2022年)R05(2023年)R06(2024年)R07(2025年)
滋賀5552921781165
京都8769888681,9081,129
大阪67111524
兵庫5895095241,128469
奈良207058143117
和歌山79574718080
鳥取15610416427284
島根7785819641,561789
岡山17512711913432
広島682483724789525
山口339254444799366
徳島176
香川000
愛媛000
高知240
「環境省 クマ類の出没情報について」から一部内容を抜粋

 

すると、R06とR07の比較では大阪府が微増している(15件→24件)のを除き、西日本全体で減少傾向にあることがわかります。このデータからも、全国的にクマが増加しているわけではないことが読み取れます。補足として、九州のデータが記載されていないのは、九州にはそもそもツキノワグマは生息していないためです。

 

こうした「東北地方での爆発的な増加と、それに伴う被害」は、マスコミの“ネタ”としての要素が強く、結果として過剰な報道が集中しやすくなります。すると受け手側では、“全国的にクマの危険が上昇している”という印象が生まれやすく、これが多くの人「クマへの不安」につながった要因のひとつだと考えられます。

 

長野県の出没は「微減」

 

長野県のツキノワグマ目撃及び人身被害 出典:ツキノワグマの目撃件数及び人身被害件数(H18~R8.1.9日現在の速報値)

 

続いて、長野県の状況についてみていきましょう。県の資料によると、令和7年度の里地での目撃件数は、4〜12月の累計で1,303件。前年度(令和6年)の同期間(4〜12月累計)は1,422件で、今年度は前年度よりも「わずかに減少」していることがわかります。

 

さらに、過去の“大量出没年”とされる年と比べると、その位置づけがよりはっきりします。たとえばH18は4〜12月で3,362件、H22は1,591件、H26は1,575件と、いずれも今年度を大きく上回っています。こうした推移を踏まえると、少なくともデータ上、長野県全体が「大量出没」の局面に入っているとは言いにくいといえます。

 

また資料内では、大量出没年の特徴として「8〜11月に増え、特に9〜10月が顕著」と示され、その背景要因として堅果類(ドングリなど)の豊凶が影響している可能性が説明されています。つまり長野県では、出没が毎年同じように増え続けるというより、「自然条件によって出やすい年・出やすい時期が変動する」と捉えるのが実態に近いのではないでしょうか。

 

上伊那は、突出して多い地域ではない

長野県の地域ごとのクマ出没 出典:ツキノワグマの目撃件数及び人身被害件数(H18~R8.1.9日現在の速報値)

 

ここからさらに、鹿嶺高原が位置する「上伊那地域」にピントを絞っていきましょう。令和7年度地域別集計(1月9日時点)を見ると、上伊那地域の里地での目撃件数は4〜12月累計で74件、同期間の人身被害は0件となっています。

 

同じ表を見ると、北アルプス地域336件、木曽地域231件、長野地域247件など、県内でも地域によって出没件数に差があることがわかります。そのなかで上伊那は、相対的に件数が少ないグループに位置づけられ、少なくともデータ上は「県内で出没が多い地域」とはいえません。

 

餌資源から読み解く、鹿嶺高原のクマ事情

 

ここまで「全国」から「地域」へと状況を整理してきましたが、ここで多くの方が「鹿嶺高原は山の上にあるので、麓とは状況が違うのでは?」と感じるかもしれません。鹿嶺高原キャンプ場は南アルプス北部の西側、標高約1,800mの地点に位置しています。南アルプス一帯はツキノワグマの生息域であり、地理的に見れば鹿嶺高原もその範囲に含まれます。

 

ただし、私たちは現地の環境条件から、「クマが鹿嶺高原に出没する可能性は相対的に高くない」と捉えています。

 

その理由は、周辺の植生がクマにとって利用しやすい環境になりにくいことです。鹿嶺高原周辺は針葉樹林帯が主体の山域で、クマの重要な食物となる堅果類(ドングリなど)が大量に得られる環境が相対的に少なく、キャンプ場周辺が餌場として定着しやすい条件になりにくいと考えられます。

 

我々も10年近く鹿嶺高原キャンプ場を管理・運営していますが、これまでキャンプ場内でクマによる被害が発生したことはありません。またシーズン中はスタッフが日常的に現地へ通い、状況確認を続けていますが、クマの目撃もごくわずか、限られた回数にとどまっています。

 

安全なキャンプを楽しむために

 

もちろん、「可能性が低い=ゼロ」という意味ではありません。だからこそ、クマを寄せつけないための基本的なルールを守っていただき、安全なキャンプを楽しんでいただければと考えています。

 

1.早朝や夕方は一人で出歩かない
クマは夜明け前後・日没前後(薄明薄暮)に活動が活発になりやすいとされています。この時間帯の一人での散策などはお控えください。

 

2.生ゴミ・食材を出しっぱなしにしない
クマは嗅覚が非常に優れており、人間の数千倍ともいわれます。嗅覚が鋭い犬よりも、遠く離れた場所の匂いを嗅ぎ分けられるとされているため、夜間に生ゴミや食材を外に出しっぱなしにしていると、クマに対して「ここに食べ物があります」と知らせてしまうのと同じ。人にとってはわずかな匂いでも、野生動物にとっては十分に強い手がかりになります。

 

また注意したいのは、クマだけではありません。匂いに誘われて動物がサイトへ近づき、実際に食べ物にありつけてしまうと、「キャンプ場=食べ物が手に入る場所」と学習します。すると次からは、匂いが少なくても寄ってきやすくなり、結果として出没が増えたり、荒らしなどの被害につながる可能性が高まってしまいます。

 

だからこそ、利用者一人ひとりの配慮が、安心して過ごせるキャンプ環境に直結します。私たち運営側も、日々の見回りや点検を継続し、万一出没情報があった場合には速やかな情報共有と注意喚起を徹底していきます。

 

参考資料:環境省 クマに関する各種情報・取組
長野県 ツキノワグマ対策について~県民の皆様・長野県へ訪れる皆様へ~
日本オートキャンプ協会 クマ出没によるキャンプ場への影響について

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